焦げを食べるとガンになるから絶対に食べたくない…
そうは言っても、火を通したらどうしても焦げはできちゃう…
どの程度だったら食べても大丈夫なのか…
焦げだけを毎日山盛りで食べなければ、気にしすぎないで大丈夫だよ!
- 国立がんセンターが発表した「がんを防ぐための新12カ条」から、「焦げた部分はさける」という項目が削除された。
- 2万尾の焼き魚(サンマ)の皮を毎日食べたとして、腫瘍が出来るのは10~15年後。
- だ液には発がん性を抑制する働きがある。
「がん」をイメージでとらえる
がんについて感覚的にイメージをつかむには、マンガ、はたらく細胞がおすすめです。
2巻の第8話と第9話のテーマが「がん細胞」になっています。
がん細胞の成り立ちから、がんができることで体の中では何が起こっているのかを、細胞たちの目線でわかりやすく物語にしてくれています。
マンガならではの誇張した表現もありますが、しっかりした監修のもとで作られているようで、まったく違和感がありません。
実際に、医師のタマゴが参考にしているくらい、勉強になるマンガです。
NK細胞の活躍もさることながら、がん細胞の心からの叫びに言葉を失います。
いてもらっては困るけれども、できてしまうがん細胞。
ある意味、がん細胞は体内にあることが自然なんです。
私たちは常に、がん細胞と共存しているんだな、ということを理解りましょう。
1978年「がんを防ぐための12カ条」
1978年に国立がんセンターが発表した「がんを防ぐための12カ条」の中の第8条に、「焦げた部分はさける」という記載があります。
これが「焦げを食べるとがんになる」の情報源とみて間違いないでしょう。
ではなぜ、このようなことになったのでしょう。
理由は2つ考えられます。
国立がんセンター名誉総長が、魚の焦げに発がん性を発見した
国立がんセンター名誉総長の杉村隆博士が世界で初めてラットに人工的に胃がんを発生させることに成功。
さらに杉村博士は魚の焦げた部分から発がん物質を固定、その発がん物質からできたがんは遺伝子変異を起こしていたことを証明しました。
国立がんセンターの名誉総長による、世界初の発見です。
このことが、国立がんセンターが発表した「がんを防ぐための12カ条」に影響を与えていないわけがないでしょう。
しかし、この実験をよくよく調べてみると、なんとも言えない点がいくつもみつかります。
まず、ハムスターに対して焦げを食べさせ続ける実験がなされましたが、この実験ではがんができませんでした。
それに続いて、焦げの中の微量な物質であるヘテロサイクリックアミンを大量に食べさせる実験によって、やっとがんができた、という経緯です。
先ほど「大量に」と言いましたが、これがどのくらいの量かというと、「サンマなら2万尾の焼き魚の皮を毎日食べ続け、10年から15年かかる」くらいの量だそうです。
毎日毎日、茶碗数杯分のおこげを年単位で食べ続ける、なんてこと、現実的にありえますか?
もし、それくらいの焦げを食べ続けている人がいたら、その人は焦げのせいでがんになったと言われても仕方ありませんが…10年たってがんになる前に、別の病気になっているでしょうね。
つまり、焦げを食べたせいでがんになった、なんてことは、現実的には考えられないわけです。
WHOが全世界に向けて作成したものだった
旧12か条は、じつは、当時の世界保健機関(WHO)が作成したものを日本がそのまま引用したものだった、との情報があります。
そのため、衛生面や生活習慣などが、日本人では考えられないほど低い国を対象にした項目が入ってしまっていたようです。
世界の中の貧困国にあっては、もしかしたら、先ほど想定したような、焦げの強い部分を10年食べ続ける…なんてことも、あるのかもしれません。
現在の日本に住む私たちは、おそらくほとんどの人が心配する必要のないレベルでも、WHOはきちんと考えていたのかもしれませんね。
2011年「がんを防ぐための新12カ条」
2011年、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターは、日本人を対象とした疫学調査や、その時点で妥当な研究方法で明らかとされている証拠を元にまとめ、「かんを防ぐための新12カ条」を発表しました。
この中で、ついに「焦げを食べるとがんになる」という内容が外されました。
とはいえ、焦げに発がん性がないわけではありません。
大変弱いながら、発がん性があることも事実です。
そのため、焦げを食べるときには、よく噛んで食べ、発がん性を抑制するだ液をたくさん出すのがいいでしょう。
「がんを防ぐための新12カ条」については、公益財団法人 がん治療振興協会が発表したパンフレットが非常にわかりやすくなっているので、そちらのリンクを張っておきます。
https://www.fpcr.or.jp/pdf/p21/12kajyou_2015.pdf
12カ条の内容を確認してみましょう
1.たばこは吸わない
2.他人のたばこの煙をできるだけ避ける
12項目しかない中で、最初の2項目を喫煙関連にしたのには、強い意志を感じます。
喫煙者自身の禁煙だけでなく、非喫煙者であってもできるだけ煙を吸わないようにする、という徹底ぶり。
たばこの害が強調されていますね。
3.お酒はほどほどに
飲む場合は 1日当たりアルコール量に換算して約23g 程度まで。
(日本酒なら1 合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3
程度)
飲まない人、飲めない人は無理に飲まないようにしましょう。
4.バランスのとれた食生活を
5.塩辛い食品は控えめに
6.野菜や果物は不足にならないように
食塩は 1日当たり男性 8g、女性 7g 未満、特に、高塩分食品(たとえば塩辛、練りうになど)は週に 1 回以内に控えましょう。
野菜や果物不足にならないようにしましょう。
飲食物を熱い状態でとらないようにしましょう。
7.適度に運動
たとえば、歩行またはそれと同等以上の強度の身体活動を1日 60 分行いましょう。
また、息がはずみ汗をかく程度の運動は1週間に 60 分程度行いましょう。
がんのみならず、心疾患や糖尿病のリスクも下げ、死亡リスクの低下につながります。
8.適切な体重維持
中高 年 期 男性の B M I( 体 重 kg /身長m2)で21~ 27、中高年期女性では 21~ 25 の範囲内になるように体重をコントロールしましょう。
9.ウイルスや細菌の感染予防と治療
地域の保健所や医療機関で、1 度は肝炎ウイルスの検査を受けましょう。
機会があればピロリ菌感染検査を受けましょう。
10.定期的ながん検診を
1年または2年に1回定期的に検診を受けましょう。
検診は早期発見に有効で、前がん状態も発見できます。
11.身体の異常に気がついたら、すぐに受診を
やせる、顔色が悪い、貧血がある、下血やおりものがある、咳が続く、食欲がない、などの症状に気がついたら、かかりつけ医などを受診しましょう。
12.正しいがん情報でがんを知ることから
科学的根拠に基づくがん情報を得て、あなたに合ったがんの予防法を身につけましょう。
まとめ
魚の焦げには発がん性がありますが、通常の食事では気にするほどのことではありません。
もちろん、味の好みで取り除くのはご自由になさってください。
わずかな発がん性でも気になる場合は、よく噛んでだ液をしっかり出して、発がん性を抑制しながら、おいしく味わって食べましょう。